ワークショップ「ニュージーランド・異国で考える学校における子ども支え方」を終えて

ワークショップ「ニュージーランド・異国で考える学校における子ども支え方」とは

このワークショップは、ニュージーランドに来て、ニュージーランドの小学校と高校を訪問したり、実際に子どもに関わっている職業人を招いてその実践について語ってもらうというものです。

本ワークショップの特徴は次の通りです。

  • ニュージーランドは南半球にあるため、日本の夏休みの期間でも、授業が行われています。北半球の学校は夏休みに入っているため、日本の夏休みに訪問しても生徒が学校にいません。
  • 実際の学校を訪問し、学校の様子を肌身で感じることができます。
  • 実際に学校に関わってきた人びとを招いての講話。
  • 書籍で紹介されている学校現場の見学「いじめ・暴力に向き合う学校づくり」。
  • 英語および日本語教育、そして翻訳を専門としている通訳者(わかりやすいです)。
  • 見聞きしたことを振り返り、深め、そして将来を考えていくための、日本語でのディスカッション。

そして、このワークショップを支えるコンセプトは次の言葉に代表されるのではないかと思います。

「私が勧めたいのは、異なった社会の異なった慣習の輸入ではなく、異なった社会の光に照らして、私たち自身の社会で生まれつつある慣習について考えるということです」 「レヴィ=ストロース講義」 2005年 136頁

このワークショップは今回が初めてでした。そのため、いろいろと振り返ることがありましたので、参加者のフィードバックも参考にしながら、文字にしてみたいと思います。

 

実際の学校を見学すること

「学校の見学が大変に記憶に残っています。そこで働く人たちや、生徒たち、さらに全体の雰囲気を感じられたことが大きかったです。このおかげで、日本に帰ってからも、自分が良いなと思ったことを、あまり既存のセオリーや規範にとらわれずに実践していきたいと考えられるようになりました。こう感じられたのは、実際に機能している現場を見られたことが一番大きいと思います。」

「そこで生活する人々の様子に直接触れることはとても意味があったと思います。個々の取り組みがどのような文化的背景のなかで成立しているのかということを、実体験を通じて少しでも感じ取ることができました。」

学校という箱物を見ることによって、学校そのものを見ることにはつながりません。はやり実際に機能している現場を見る必要があるのです。そのためにも、実際に授業がおこなわれ、先生が生徒とどのように関わっているのかということ、生徒がどのようなあり方でそこにいるのかと言うことを見ることは大きな意味があることが確認できたと思いました。

 

学校全体で歓迎してくれたこと

「二つの学校で受けた歓迎の儀式、学校に感じた生徒の安心感や誇りのようなもの、“waka”の精神などいくつもあり、なぜか「ジーン」と涙しそうなシーンも実は度々ありました。」

「正式な歓迎の儀式を受けさせていただい事に深い感謝と感動を覚えました。高校生たちの振る舞いには誇りや喜びのようなものが感じられ、もっともっと歌やダンス(と称してようのでしょうか)を観ていたいと感じました。」

ハミルトンイースト小学校では、全生徒を体育館に集めて歓迎してもらえました。また、エッジウォーター高校では、敷地内にあるマラエで正式なウェルカムの儀式を受けることができました。それぞれに学校の校長先生直々に学校のことについても聞く機会があったのです。

 

アンダーカバー・チーム(秘密いじめ対策隊)に直接会って話をきけたこと

エッジウォーター高校は、「いじめ・暴力に向き合う学校づくり: 対立を修復し、学びに変えるナラティブ・アプローチ」に収められている活動の拠点です。その中に、アンダーカバー・チームの取り組みがあります。

実際にいじめ(いやがらせ)を受けていた本人と、それを支えるアンダーカバー・チームを呼んでもらい、直接はなしを聞くことができました。

「「秘密いじめ対策隊」…実践できそうな予感がするから。いじめでなくても、他のテーマでも。」

この活動を文字だけ情報で実践しようとするといろいろな不安が先行します。ところが、実際に話を聞くことは、そのような不安を払拭してくれるような気がしてくれました。

 

振り返りの時間

学びの過程において、ただインプットをもらうだけでは不十分であると感じています。そのため、ワークショップでは、自分が見えたこと、感じたこと、受け取ったこと、理解したこと、不思議に思ったこと、を参加者同士で共有して、それぞれの理解の幅を広げるようにしました。

「訪問後すぐに感じていたモヤモヤや疑念が、参加者の皆さんと経験を共有するうちに、少しずつ晴れていき、実践するしかないという気持ちにストンと落ちていったことが大変印象に残っています。日頃、なかなか多くの人と経験を共有する機会がないので、もやもやしたものを消化不良のままにしてしまうことが多かったのですが、経験してすぐに多くの人と議論ができたことで、新しい発見ができたと感じています。」

ナラティヴ・セラピーのワークショップでも重要視しているのですが、自分の受けたものを共有し、相手との理解に照らし合わせて、自分が受け取ったものの理解の幅を増やしていくことの意義を今回も確認できました。

今、この時間の必要性をほぼ確信できるようなところまで来ていると思いました。

 

十分な休み時間

このワークショップでは、インプットの量はたいへん多くあるのですが、たっぷりと休み時間と昼休みを取っています。また、ちゃんと5時には終わります。この構造は、新たな学びをしていく上で不可欠のように感じます。

「濃密な一週間、しかしティータイムがあり17時終了の余裕のあるスケジュールで“お腹いっぱい”ですが“消化する時間”をいただいてとてもよかったと思います。ティータイムは消化の時間だけでなく参加の皆さんとコミュニケーションができる副産物のとても楽しい時間でもありました。」

 

参加者のコミュニティ化

ナラティヴ・セラピーのワークショップでも同じなのですが、参加者同士がとても仲良くなっていくのはたいへん嬉しいことです。

「ちょっとした自己紹介はしたものの、参加者間でのコミュニティ作りセッションなどはほとんどされなかったにもかかわらず、気付くと何とも言えない平和な関係性がメンバーの間に築かれていたのも、個人的にはとても良かった点です。無理やりコミュニティに入れこまれる感じがなく、気付けばコミュニティ化していたのは、私を含めてメンバーの皆さんが、講師や現場の生の声に触れていく間に、出会った人々の平和な関係性に感化されていた(知らずに学んでいた)からではないかと思います。とはいえ、ティータイムもかなり大きな力をもってました。」

 

結果的に

このようなワークショップでしたので、次のようなコメントをいただけました。たいへん嬉しい限りです。

「ただ、一言、本当に素晴らしいワークショップでした。(中略)僕にとっても、今回のワークショップは今までで受けた中で一番良いワークショップでした。講師の人の話でも現場の見学でも、英語が分からなくても伝わってくるものがあり、生の声を聞くことでしか体験できない、本当に来る価値のあるものだったと感じています。海外に行ってここまで充実したことは今までないかもしれません。」

「デザインは全く言うことがないと感じました。スケジューリング、内容、講師の選定、学校の選定、通訳(素晴らしかったです)をはじめとしたサポート体制、現地留学の高校生とのふれあい、間に挟まれる休憩、宿泊場所のロケーションなど、全てが良かったです。」

「また、講師陣は大変贅沢で学校のキーパーソンから各方面からお話をうかがえたことは本当に貴重でした。この講師陣を実現できるDCNZの皆様との信頼関係があるからのことと思っております。」

フィードバックは、参加者の半分ほどの方からしかいただいておりませんで、後にまた紹介したいと思います。

来年の是非とも、同じワークショップを企画したいと考えているところです。

 

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